新しく社員を雇い入れる場合には、一定期間を試用期間とすることをお勧めしております。なぜなら本採用した社員を解雇することは難しいためです。
法律では、解雇をするには客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする、とされています。
これは、具体的な基準がある訳ではなく抽象的な表現なため、はっきり言って余程の事情がない限り社員を解雇することはできません。
もちろん、新しく採用した社員が会社の期待に沿わないような場合であっても同様で、本採用後は解雇することを難しいものとしています。
試用期間に解雇をする場合には、相当の事由が必要なのは同じなのですが、本採用後の社員を解雇する場合に比べると若干条件が緩くなるとされています。
また、採用時に試用期間における本採用を拒否する理由を、労働条件通知書において明示し、条件に合わないようであれば、試用期間が終わる際に契約を満了とするとあらかじめ約束することによって、労使双方において納得感も高まるものと思われます。
このような理由で試用期間をお勧めするのですが、ひとつ注意が必要です。試用期間において労働保険や社会保険の加入をめぐるトラブルが起こることがあります。
よくあるケースが、試用期間中は社会保険に加入しないというものです。
会社によっては堂々とうちは試用期間後にならないと社会保険に加入しない、と伝えている場合もありますが、会社のルールであっても許されるはずもなく、定められた社会保険の加入要件を満たすのであれば、加入させなければなりません。
勘違いしやすいのは、健康保険や厚生年金保険などの社会保険加入です。2か月以内の期間を定めて使用される者や季節的業務に4か月を超えずに使用される者については、社会保険に加入しなくてもよいとされているため、これを試用期間に当てはめて試用期間は社会保険に加入させない、と捉えていることがあります。
しかしながら試用期間といっても、あくまでも事実上の使用関係で判断されますから、雇用契約等の有無や種類は関係ありません。
労働保険においても同様で、労災保険はパート、アルバイトなどの雇用形態を問わず加入させなければなりません。雇用保険は少なくとも1か月以上続けて働くようであれば、原則として加入させなければなりません。
厚生労働省では、労働保険の未手続き事業の加入促進を主要課題と位置づけ、11月を「労働保険適用促進強化期間」と定めています。
以前、労働契約の偽装について取り上げましたが、偽装試用期間における労働保険や社会保険の未加入も見られます。
食材の偽装問題も企業の意識の低さがきっかけとなりましたが、試用期間についても同様です。正しく社会保険に加入させているか改めてご確認ください。