厚生労働省では、9月1日に若者の「使い捨て」が疑われる企業等に関する無料電話相談を行ったところ1日で1042件の相談が寄せられたそうです。
相談の中身については「残業代が払われない」が半数以上を占めていました。
もちろん残業代が支払われないのは、労働基準法違反であり許されるものではありません。でもこれって今に始まったことではないと思います。
それこそ高度成長期に社会人だった方でも、未払い残業などはあったと思います。
直接話を聞いた訳ではありませんが、労働者も今のように簡単に情報にアクセスする手段がありませんでしたから、きっと労働基準法など知らずに、それこそ未払い残業の事実があったことすら知らなかったのではないでしょうか。
もちろんその当時は、まだ終身雇用が制度として機能しており、仮に若いうちは給料が安くても将来、出世することによって高い給料をもらうことが約束されていた時代でもあったことでしょう。そのため特に文句を言うことなく働いていた面もあると思います。
時代が変わって今では、たとえ1部上場企業であっても明日はどうなっているか分かりません。つまり将来まで雇用し続けることを約束できない状況となっています。
しかし将来に渡って働き続けることが、約束されなくなっているにもかかわらず、今の若者は一つの企業で働き続けることを望んでいるようです。
2013年版の厚生労働白書によると、「望ましいキャリア形成」を尋ねたところ「一つの企業で」と答えた20代は99年が36.6%だったのに対し、11年は51.1%と急増しているそうです。
このことは、大卒者の就職活動をみても分かります。ほとんどの学生が大手志向であり、中小企業には目もくれません。やはり一つの企業でキャリアを作りたいと希望していることの表れなのでしょう。一つの会社でずっと働き続けたいから、少しでも大きい(=安定した)企業に入りたいと言うところでしょう。
ブラック企業と呼ばれる会社が始末に負えないのは、このような考え方を悪用して労働者が潰れるまで意図的に働かせる点にあります。
もちろん、ブラックなことをする企業が悪いのことは、言うまでもありませんが、仮に入社した会社がブラック企業なら辞めればいいのです。そうすればブラック企業もいずれ淘汰されることになるでしょう。
厚生労働省や労働基準監督署がブラック企業の取り締まりを強化することも必要かも知れませんが、マンパワーにも限度があります。
一つの企業だけでキャリアを作るという考え方を改め、自分にとってプラスにならない企業は辞めるという意識に変わらなければ、いつまでもブラック企業の問題は解決しないのではないでしょうか。
そういう意味でも従来の就社型の社員ではなく、ジョブ型の正社員というキャリア形成も有る、という社会や個人の意識の転換が必要なのかも知れません。