長時間労働と言うとよく残業代の未払いについて問題視されますが、実は残業代以外にも注意しなければならないことがあります。
それは労働時間が長くなるについて、精神疾患や脳・心臓疾患の原因と判断される可能性が高くなるということです。
当然ながら長時間労働が原因となってこれらの傷病にかかったと判断されるようであれば、業務災害となり労災と認定される可能性も高まっていきます。
労災と認定された場合には、企業としての配慮が欠けているとして損害賠償請求がなされることも考えられます。これは労働契約法においても使用者には配慮義務が課されているためです。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。(労働契約法第5条)
60時間を超えたときの時間外労働の割増率が50%とされたのも、それだけ長時間労働が与える影響が重視されているからなのでしょう。
さて、それではどの程度の労働時間になると注意が必要なのかを、厚生労働省から出ている基準で見てみたいと思います。
まずは精神疾患との関係における判断基準として、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日基発1226第1号)によると強い心理的負荷となる時間外労働について、極度の長時間労働を1か月160時間以上、心理的負荷が強になる例として発病直前の連続した2か月間に、1か月当たり約120時間以上または、発病直前の連続した3か月間に、1か月当たり約100時間以上としています。
次に脳・心臓疾患などについての判断基準としては、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(平成13年12月12日基発1063号)があります。
これによると、発症前1か月ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える程、業務と発症の関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間なし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時は業務と発症の関連性が強いとされています。
1か月に100時間を超える時間外労働となると、精神疾患、脳・血管疾患のどちらにおいても業務との関連性が強いと判断されるようです。