労災

飲み会後の事故が労災だって最高裁が判断したけどどうよ

更新日:

先日、海外の子会社で働いていた社員が急性心筋梗塞で亡くなり、遺族が労災の適用を求めて起こした裁判において労災を認めれる判決がありました。

海外の子会社でも労災の対象になるという画期的な判例がでた

今度は、会社での飲み会から仕事に戻る途中の事故で亡くなった男性社員の妻が起こした裁判において、最高裁判所が労災と認める画期的な判決がでたそうです。

事故の概要

亡くなった男性は、事故の4か月前に名古屋市にある金属加工会社の本社から福岡県にある従業員7名の子会社に出向中でした。

上司が企画した中国人研修生の歓送迎会への参加を誘われましたが、翌日社長に提出する書類を完成させるために一旦欠席すると伝えました。

しかし、上司から今日が最後となる者もいる、歓送迎会の後で資料づくりを手伝うと説得され、1時間半遅れて居酒屋に行きました。

歓送迎会には、従業員全員が参加していました。男性はビールを勧められても断り、歓送迎会のあと会社に戻る前に酔った研修生をアパートに送り届ける途中、大型トラックに衝突するという事故にあいました。

飲酒と通勤の関係

会社を出てからの移動については通勤となりますが、その通勤におけるケガなどについては通勤災害として取り扱われます。

通勤災害は、労働者が就業に関し、合理的な経路と方法により移動をしている途中において事故にあった場合に適用されます。

移動については具体的に「①住居と就業の場所との間の往復」、「②就業の場所から他の就業の場所への移動」、「③ ①に掲げる往復に先行し、または後続する住居間の移動」と示されています。

そのため、①から③の移動経路を外れたり、途中にどこかに立ち寄ることによって移動を中断する場合、移動経路から外れる間や中断後の移動については、厚生労働省で定める日常生活上必要な最小限な行為を除いて通勤災害と認められないとされています。

これまでも、忘年会や取引先との飲酒後の事故が通勤災害に当るか否か争われてきましたが、このように通勤災害と認めれる例は限定されているため、居酒屋などで一杯飲んでから帰るようなケースはほぼ労災と認められることはありません。

飲酒と業務関連性

一方で、出張中のように出張先と宿泊施設との間の移動もあります。たとえば出張中に仕事が終わり、居酒屋で食事をしてからホテルに戻る場合などです。

このようなケースでは、出張過程全体が使用者による支配下に当ると考えることによって、通勤災害とは判断されず業務災害にあたり、労働災害の判断要件となる「業務遂行性」が肯定されるケースがあります。

今回の歓送迎会に戻ると、すべての従業員が参加し費用は会社が負担していました。

裁判所は「男性は歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その後、残業に戻ることを余儀なくされた」「同僚の送迎はもともと上司が行う予定で、会社へ戻るついでに男性が送っていったことを踏まえ会社から要請された行動の範囲内だった」と指摘しています。

やっぱり飲み会後の労災は難しい

最初に画期的な判例と言ったのは記事内で弁護士のコメントとして「労働者の実態を踏まえた画期的な判断だ」とあったからです。

でも実態をみると、亡くなった男性社員は飲み会に参加はしていましたが、車の運転をしているところからも、飲酒をしていないことは十分に予想されます。

今回の裁判では、飲み会に参加した後の労災事故ということで注目されてきました。でもよくみるとただの飲み会とは異なっており「飲み会後の事故」に引っ張られすぎな感があります。

出張中の飲酒でさえ労災と認められるケースがあるのですから、たとえ飲み会に参加していたとしても、それが業務によるものだと判断される可能性は高かったと言えるでしょう。やっぱり会社帰りに一杯やった後の労災認定は難しいと思います。

-労災

Copyright© リンクス社労士事務所 , 2024 All Rights Reserved.