同一労働・同一賃金の話しが盛り上がっていますが、パートタイマーなどの契約社員から定年後の再雇用の社員に広がりをみせています。
横浜市の運送会社で60歳の定年後に、1年契約の嘱託として再雇用された社員が業務内容が定年前と全く同じにもかかわらず、嘱託社員の賃金規定が適用された結果、年収が2~3割下がったとして、勤務先の会社を相手に訴訟をおこしました。
東京地裁によると、「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」とし、定年前の賃金規定を適用し差額分を同社に支払うよう命じました。
企業における定年後の取扱い
企業における定年年齢は60歳が一般的でしたが、年金の支給開始が60歳から65歳へと引き上げられることによって、収入の空白期間が生じることになり、これに併せて高年齢者雇用安定法が改正されています。
法改正により、定年の廃止、65歳への定年年齢の引き上げ、65歳までの継続雇用のいずれかを選択しなければならなくなりました。
それでは、実際のところはどのような扱いが多いのかをみてみましょう。
東京都産業労働局が実施した平成24年度高齢者の継続雇用に関する実態調査をみると、8割以上の会社が3つの選択肢のうち、圧倒的に65歳までの継続雇用継続雇用制度の導入を選んでいます。
継続雇用の契約期間については、7割が1年としているようです。
次に継続雇用後の勤務日数や時間についてみてみましょう。
まず、労働者が勤務日数や勤務時間を選択することができるかについて、「制度は1つしかない」が46.5%と半数を占めています。さらに1週間の所定労働時間は、35時間超40時間以内が約7割となっています。これは継続雇用制度となる前と労働条件に変更が無いケースが多いことが予想されます。
次に賃金をみると、所定時間内賃金については、定年時を10割とした場合に対して「5~6割未満」が23.3%と最も多く、「6~7割未満」が22.6%、「7~8割未満」が15.3%となっていて、合わせて6割の会社において賃金水準が下がる結果となっています。
東京都が実施した調査なので、あくまでも一般的な傾向ではありますが、多く会社において、定年後に継続雇用をする場合の労働条件が大きく変わる訳ではありませんが、賃金水準は下がる傾向にあるようです。
この背景には、在職老齢年金の仕組みも関係しているでしょう。
60歳以上65歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けることができる場合に、年金額が支給停止される在職老齢年金という制度があるため年金を満額受けるために、賃金水準を抑えるケースがあります。
これまで国としても賃金が下がることを認めていると思われる点もあります。
それは、60歳の定年後に再雇用をされた際に賃金が75%未満に下がった場合には、65歳まで雇用保険から「高年齢雇用継続給付」を支給するとしているためです。
もちろん、業務内容は変わらないのに賃金が下がると労働者の意欲が低下するということもあるため、問題として捉えている企業も多いでしょう。
今回の判決の結果、ますます高齢者の取扱いが難しくなることが予想されます。今後の動きに注目しなければなりません。