会社を起業して売り上げが上がってくると、当然ながら忙しくなり時間が足らなくなっていきます。
ある程度までは、社長が自分の時間をやり繰りして対応できますが、それでも時間が足りなくなると「そろそろ社員でも雇わなければならないかな」となります。
今回は、はじめて人を雇い入れることになった場合の社会保険について、説明してみたいと思います。
社会保険とは
ひと口に社会保険と言っても、労働保険と社会保険に分かれます。
労働保険には、労災保険と雇用保険があります。
労災保険は、主に仕事中や通勤の際のケガなどに対して、治療費を支給したり働けない期間の生活を補うものです。正社員はもちろんですが、パートやアルバイトであっても加入しなければなりません。
ちなみに社長など役員については、本来労働者ではないので労災保険に加入することはできませんが、中小企業の場合は、役員も社員と同じような仕事をしていることが多いので特別加入という方法で加入することができます。
次に雇用保険です。こちらは社員が退職した場合だけでなく、育児休業や介護休業などを取得した場合などにも受けることができます。
雇用保険には、1週間の所定労働時間が20時間以上あって、31日以上継続して雇用することが見込まれる者が対象となります。ただし、例外的に昼間は学校に通う学生などは、この条件に当てはまる場合でも加入しなくれもよいとされています。
最後に健康保険と厚生年金保険があります。
健康保険については病気をした場合の治療費の補填でおなじみでしょう。
とりわけ国民健康保険との大きな違いは、傷病手当金の支給がある点です。
傷病手当金は、けがや病気などによって働くことができない期間の所得補償として、報酬額のおよそ2/3を最長1年6か月間に渡ってもらうことができます。
そのため傷病手当金は、社会保険に加入する大きなメリットと言えます。
厚生年金は、高齢になって年金としてもらうイメージが強くありますが、外にも病気やケガなどによって、身体に障害が残ったり死亡した際にも保険給付を受けることができます。
民間の保険会社の保険は、これらの傷病手当金をはじめ、老齢年金、障害年金や遺族年金などを補うためのものであり、社会保険に加入せずに生命保険に加入するのは、はっきり言って本末転倒とも言えるでしょう。
社会保険に入らなければダメな条件とは
ざっくりと説明しましたが、社会保険に入らなければならない条件をまとめると、次のとおりとなります。
- 労災保険は、ひとりでも社員を雇ったら入る。
- 雇用保険は、労働時間や日数が一定以上の場合に入る。
- 健康保険、厚生年金保険は、法人の場合は入る。法人であればたとえ社長ひとりの会社であっても加入対象となる。
よく聞くのが、起業当初は社会保険料の支払いが厳しいので、経営に余裕が出てから加入するという話です。
さっきも書いたように一定の条件を満たしたときは、法律的には加入しなければなりませんが、実はそれだけではありません。
新たに社会保険に加入することによって、毎月の社会保険料の負担が発生します。
すると社員のなかには、給料から社会保険料を引かれることになるので、手取り額が減ることを嫌がる人もいます。
もちろん会社としても新しく負担が増えますが、さらに社員の社会保険料分の給料を上げることは難しいでしょう。せっかく社員のためを思って社会保険に加入するのに、目先の手取り額を気にする社員から不平を言われては、たまらないものです。
黙っていればバレないか
また、社会保険料の負担もあるけど、そもそも加入手続きに行かなければバレないのでは、という声も聞きますがこちらも無駄です。
今年の1月からマイナンバー制度がはじまりました。マイナンバーは税と社会保障と災害対策に利用されるとされています。なので社会保険の手続きの際にもマイナンバーが必要になります。
以前のエントリーに書きましたが、マイナンバーには個人番号以外に法人番号というものがあります。
社員を雇用し給料を支払っている場合は、税務署にその旨申告しなければなりません。この申告の際に法人のマイナンバーが必要となります。
そのため社員を雇用していることが税務署に伝わります。すると税務署から年金事務所などに情報が提供されるので、社会保険に未加入なことがバレるという仕組みです。はっきり言って時間の問題です。
なので、保険料の負担が大きいなど企業の言い分はあるかもしれませんが、人を雇用する場合には、きちんと社会保険に加入して頂きたいと思います。
これらの手続きを社労士に委託する理由として、社会保険料の負担を嫌がる社員に対して、「本当は入りたくないんだけど社労士が言うからしょうがないじゃん」という言い訳にも使えます。
社長自身が、「そもそも手続きが面倒だから」というなら私の方で代行させて頂きますよ。