労働基準法の改正案のなかで、年5日間の有給休暇の取得の義務化というものがあります。
これについては以前のエントリーでも取り上げました。
ざっくり言うと、年間の有給休暇の付与日数が10日以上ある労働者に対して、そのうち5日については使用者が取得時季の指定をしなければならないというものです。
本来、有給休暇というのは、労働者が請求する時季に与えるものとされていますから、使用者が有給休暇の取得する時季を指定するというのは、会社が年間の休日を増やさなければならないということになります。
もちろん休日を増したからといって、仕事の量が減るわけではないので、営業日当たりの仕事量は増えることになるでしょう。人手の少ない中小企業などにおいては、この法改正から受ける影響も大きくなるわけです。
国が目指す女性活躍の推進
政府は一億総活躍社会の実現を目指しており、そのなかで女性の活躍を新たな柱としてしています。
法律においても女性が職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し活躍できる環境を整備するためとして女性活躍推進法が制定されました。
これによって平成28年4月1日から301人以上の労働者を雇用する事業主については、①自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動計画の策定・届出、③情報の公表などを行うものとされています。
女性の活躍を邪魔する理由
女性の活躍のひとつとして管理職への昇進がありますが、一般的に男性に比べて女性には昇進意欲が少ないというイメージがあります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が従業員数300人以上、100-299人の会社を対象に実施した「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(平成25年3月)によると
一般の従業員が昇進を望まない理由として、「自分には能力がない」、「責任が重くなる」などの項目については、男女でほとんど差がありません。
男女間で差がある理由としては「仕事と家庭の両立が困難になる」「周りに同性の管理職がいない」があるようです。先ほどの女性活躍推進法によって今後、企業が一定の割合の女性の管理職を増やすことができるようにはなるでしょう。
そうなると、管理職になることを阻む要因として注目しなければならないのは「仕事と家庭の両立が困難になること」です。仕事と家庭の両立が困難というのは、労働時間が長いために家事や育児などに支障がでること、要するに「残業」や「休日出勤」が足かせになるということでしょう。
つまり、残業や休日出勤などを減らすことができて、はじめて「仕事と家庭の両立」につなげることができます。
企業における有給休暇5日の義務化というのは、休みが増えたことによる業務のしわ寄せが残業時間の増加につながりかねないものであり、巡りめぐってこれが女性活躍を妨げる要因にもなり得る気がしています。