労働者のセーフティーネットである社会保険の網の目が細かくなってきています。
65歳以上も雇用保険加入へ
65歳以上の雇用保険については、法律によって加入することができない、とされています。そのため現状では、65歳以上の方については新たに就職しても雇用保険に加入できず、退職しても基本手当と呼ばれる失業給付を受けることができません。
一方で、企業などで働く65歳以上の高齢者は、320万人となり10年前と比べて2倍以上に増えているそうです。
このように、高齢になっても働く人が増えていることを受けて厚生労働省では、65歳以上で新たに就職した場合にも、雇用保険に加入できるように法律の改正案を提出するとのことです。
NHK NEWS WEB 12月8日
(www3.nhk.or.jp/news/html/20151208/k10010333941000.htmlより)
改正案では、失業した場合に賃金の一定割合で50日分が支給され、雇用保険料については、企業負担分も含めて当面数年間は免除となるようです。
短時間労働者の社会保険加入義務が拡大
健康保険や厚生年金保険などの社会保険をみてみると、これまでパート社員など、正社員と比べて週の勤務日数や勤務時間が短い社員については、社会保険への加入義務がありませんでした。ざっくり言うと正社員と比べて4分の3の働き方が目安とされています。
労働日数や労働時間などの働き方による社会保険の格差を減らすため、平成24年8月に法律改正があり、平成28年10月から新しい基準による加入制度が始まることなっています。これによってパート社員など短時間働く労働者についても社会保険への加入義務が発生することになります。
ただし、いきなりすべてパート社員が対象となると企業負担が大きくなりすぎるため、一定の条件を満たす場合を対象とするものとなっています。
具体的には、次のような条件があります。
- 週20時間以上
- 月収8.8万円以上
- 年収だと106万円以上
- 1年以上勤務する見込みがある
- 従業員数が501人以上の企業
- 学生を適用場外とすること
これをみると、どこかで見たことがある条件があります。
・週20時間以上
・1年以上勤務する見込みがある
・学生を適用除外とすること
お分かりでしょうか?
これは雇用保険への加入条件です。
平成22年からは雇用期間が短くなって31日以上の見込みとされていますが、以前は6か月以上勤務の見込み(さらに前は1年以上勤務の見込み)とされていました。
また、平成13年より前は雇用保険にも年収要件があって90万円以上とされていました。
つまり、雇用保険については、徐々に働く時間や期間が短い者についても加入義務が生じてきました。同様に、社会保険についても加入条件が広がることが十分に予想されるわけです。
多様な働き方へのながれ
少子・高齢化の声が聞かれるなか、社会保険への加入条件の改正によって高齢者に対しても社会保険への加入見直しが進んでいます。
パート社員への社会保険義務の拡大については、もともと女性労働者への社会保険加入促進をイメージしたものでした。
しかし、労働時間などの加入条件をみると、週20時間以上の労働時間となると1日8時間労働として週3日働く場合は加入条件を満たすことになります。
こうなると、定年などによって退職した高齢者であっても社会保険に加入するケースが出てくるでしょう。
社会保険への加入条件が広がることによって、企業としての負担感が強まることは予想されます。またマイナンバーによって社会保険へ未加入の企業に対する対応も厳しくなることも予想されます。
社会保険への加入対象者の広がりは、企業負担が厳しくなるというマイナスに考えてしまいます。
しかし、以前取り上げたユニクロのように、週休3日や4日のような働き方でありながら、社会保険への加入条件を満たす働き方など、単なる正社員やパート社員といった呼び方だけでなく、性別や年齢を超えて多様な働き方の可能性を広げる機会と考えることもできそうです。