「ユニクロ」でおなじみのファーストリテイリングが、10月より週休3日を選べる制度を導入するようです。
「ユニクロ、週休3日制導入へ 10時間労働で給与同水準」
ファーストリテイリングは10月から、国内の衣料専門店「ユニクロ」で働く社員を対象に、希望に応じて週休3日制を選べるようにする。多様な働き方を認めて、人材をつなぎとめるねらいがある。
原則として、客の多い土日を含む週4日働き、休みは平日に3日とする。出勤日の労働時間を1日8時間から10時間にするため、週あたりの労働時間は40時間で変わらず、給与水準も同じになる。まずは特定の地域で働く「地域正社員」の約1万人を対象とし、2千人ほどの選択を見込む。格安衣料品店「ジーユー」や本部の従業員に広げることも検討している。(朝日新聞 2015年8月20日)
約840店で働く転勤のない「地域正社員」約1万人のうち、本人が希望すれば土日などの繁忙期を除いて週休3日とするそうです。
確かに店舗では、週末は広告が入ることもありかなり混んでいる印象があります。一方で平日はそれ程でもなく繁閑の差がかなりあるように感じます。
このように業務において繁閑の差が大きい場合には、同社が導入する変形労働時間制がフィットします。
週休3日を考える
ひとくちに週末3日を取り入れるといっても、2通りの考え方があります。
ひとつめは、1日の労働時間については、従来のままで休日を増やす方法です。
例えば、1日の所定労働時間が8時間の会社とすると週休2日の場合は、5日勤務となり、週の労働時間は40時間です。
これが週休3日となると4日勤務になり、週の労働時間は32時間となります。
さらに週の労働時間を減らして週30時間未満とすると、社会保険に加入しなくてもよくなります。このように労働時間が減ることで企業の負担も減らすことができます。
なお給与については、月給の場合であっても32時間と減るので、40時間労働に対する8割としても、その額が最低賃金以下とならない限り問題ありません。
もう一つが、同社のように変形労働時間制を取り入れる仕組みです。
変形労働時間制の趣旨については厚生労働省から次のような通達が出されています。
変形労働時間制は、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、労使が労働時間の短縮を自ら工夫しつつ進めていくことが容易となるような柔軟な枠組みを設けることにより、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週休2日制の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的とするものであること。(昭63.1.1基発1号)
当時は週休1日が当たり前でしたので、変形労働時間制を取り入れることによって週休2日制を普及させる目的もあったようです。
今回の同社の取り組みもまさに、変形労働時間制を取り入れることによって、柔軟な働き方を目指すものです。
1日の労働時間を8時間から10時間に延ばすことによって、週における労働時間については従来通り40時間としています。そのため、変形労働時間制を管理する手間は増えますが、給与の額や社会保険については考慮する必要がありません。
ユニクロが週休3日を導入するわけ
ところでなぜ週休3日の話が出てきたのかと気になったので妄想してみました。
文部科学省から、東京オリンピックに向け日本社会を元気にするための取り組みとして「夢ビジョン2020」が発表されています。
このなかで、「ライフスタイルの変革」として週休3日制の導入が提案されております。
週の総労働時間を変えずに休みを増やす変形労働時間制は、実務的には管理の負担はありますが、給与や社会保険料などのコストがかかならない取り組みです。
文部科学省の提案ではありますが、こうした提案に対応し週休3日を表明することによってマスコミなどに取り上げられることは、十分に予想できることでしょう。
売上高が減少しておりアパレル業界のなかでかつての勢いが衰えているとも言われてる同社ですが、打ち上げ花火で終わらないことをお祈りしたいと思います。