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残業代ゼロ法案ばかり注目が集まるけど中小企業に影響がある法改正はこれだ

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今後の労働時間法制のあり方について、労働政策審議会において検討されてきました。その中で注目を集めてきたのが、特定高度専門業務・成果型労働制、いわゆる高度プロフェッショナル制度の創設です。

ただし、年収1075万円以上だとか、金融商品のディーリング業務やアナリスト業務、コンサルタント業務などの専門職とするなど、一定の条件を設けることによって対象者を絞り込むものとしています。

確かに今後、要件が緩和されて対象者が拡大される可能性は残りますが、まずは労基法改正に向けて動き出しました。

この高度プロフェッショナル制度を残業代ゼロ法案として、盛り上がっています。ブラック企業被害対策弁護団では、漫画「ブラックジャックによろしく」を使って「ブラック法案によろしく」という冊子まで作っています。

こんなのとか

こんな感じです

このように、高度プロフェッショナル制度にばかり注目が集まっていますが、対象者が限られているため今のところは関係ない会社も多いわけです。

むしろ高度プロフェッショナル制度に隠れて目立ちませんが、もっと多くの企業に影響があると思われる部分があります。

それは、中小企業における月60時間を超える残業に対して割増率が50%以上となる部分です。

平成22年4月から労働基準法が改正されましたが、その際に1か月に60時間を超える時間外労働を行う場合の割増率が25%から50%に引き上げられました。

ただし、中小企業については当分の間、適用を猶予するとされていましたが、これを見直す法改正です。法改正の適用時期については4年後の平成31年としています。

報告書には、次のように記載されています。

(1)長時間労働抑制策
①中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直し

  • 中小企業において特に長時間労働者比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進めることが適当である。
  • 上記の環境整備を図りつつ、中小企業労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第37条第1項ただし書きの規定について、中小企業事業主にも適用することが適当である。
  • 中小企業の経営環境の現状に照らし、上記改正の施行時期は他の法改正事項の施行の3年後となる平成31年4月とすることが適当である。

猶予の対象とされてきた中小企業とは次の1、2のどちらかに該当する企業です。

  1. 資本金の額または出資の額
    小売業   5000万円以下
    サービス業 5000万円以下
    卸売業   1億円以下
    上記以外  3億円以下
  2. 常時使用する労働者数
    小売業   50人以下
    サービス業 100人以下
    卸売業   100人以下
    上記以外  300人以下

資本金や労働者数については営業所や支店単位ではなく、会社全体の数字で判断されます。

この法改正によって、中小企業の場合は適用されていなかった残業代の割増率がアップされます。現在の25%の割増率が60時間を超えた場合については、倍となる50%です。

ここで問題となってくるのが、長時間にわたる残業がある場合です。毎月の残業代の負担増加や未払い残業代が新たな労務リスクとなってきます。

残業代については、過去2年分にわたって請求することができるとされていますから、会社に不満をもった労働者が退職する際に未払い残業代として請求してくる可能性があります。

未払い残業代のある会社の多くが客観的な労働時間管理をしていないため、請求された額通り支払わなければならないことが考えられます。

中小企業においてもこの法改正が適用され、残業代の支払義務が発生することは、経営的にも体力のある大手と比べて、より多くの企業において影響を与えることが予想されます。

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