有給休暇

有給休暇の取得を促進するより、いっそのこと買い上げてはどうでしょうか

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政府と経済界、労働界の代表による「政労使会議」が開かれた席上で安倍首相は、昨年に続いて経済界対して、次の春季労使交渉でも賃上げを続けるよう協力を要請しました。

また、有識者会議では3連休が多い9月から11月までを重点期間と位置付け、連休に合わせて有給休暇を取ることで4日以上の連休を実現することなどを提言されたとのことです。

それでなくても連休が続いて稼動日が減っているなかで、さらに有給休暇を使って連休を増やすなんて、なんという無茶ぶりでしょう。まあ、どうなるのでしょうか。

先日、消費税を上げるか否かの判断をする指標として重視されていた7~9月期における国内総生産(GDP)速報値が発表されましたが、年率換算で1.6%減と想定より低くなり、衆議院の解散総選挙となりました。

首相としては景気の回復を実現するために、少しでも労働者の賃金を引き上げていきたいところでしょう。その気持ちもわかりますが、何か名目もないまま賃上げというのも難しいように思います。

有給休暇の取得率アップは難しい

冒頭で連休に合わせて有給休暇を取るという話しがありましたが、社員数が少なく、業務に支障をきたすという会社も多いでしょうから、有給休暇を取ること自体が難しくなっている気がします。

ちなみに、平成25年1年間に企業が付与した有給休暇日数は、労働者1人あたり平均18.5日でした。そのうち労働者が取得した日数は9日で、取得率は、48.8%となっています。

平成26年就労条件総合調査結果の概況

企業規模別にみると、当然ながら社員数が少ないほど取得率も低くなっています。この理由も代わりの人がいないから休めないということなのでしょう。

ここで、さらに有給休暇の取得を増やすというは難しいのではないでしょうか。

いっそのこと有給休暇を買い上げては

毎月の賃金を引き上げるというのは難しいこともあるでしょうから、残っている有給休暇を買い取るというのはどうでしょうか。これであれば一時金として支給することができます。

そうは言っても有給休暇の趣旨としては、「労働者の心身の疲労の回復と労働力の維持培養を図るために与える」とされていますから買い上げは、この趣旨に反するものとして禁止されています。

ただし、次の場合に、残っている休暇に対して金銭の給付を行うことは有給休暇の事前買い上げとは異なるとして認められています。

1.退職によって権利が消滅する有給休暇
2.有給休暇の権利を行使しなかったことによって、2年の消滅時効にかかる有給休暇

そこで、この2のケースに当る時効によって消滅する有給休暇を買い上げるというものです。

これであれば、社員数が少ないからという理由で取得できなかった有給休暇を全て買い上げることができます。

また、会社によっては有給休暇を取得する人が決まっていて、社長は内心面白くないと感じている場面もあるでしょう。消化できずに残っている有給休暇を買い上げる方法であれば、普段から消化している社員については、有給休暇の残日数も少なく不公平感もなくなります。

そうはいっても会社に買い上げる余裕がないというのであれば、消滅する有給休暇を買い上げる会社に対して、減税や補助金などを支給する仕組みにしたらいいと思います。

地域振興券のように、配布に対する作業が発生する訳ではありません。普段なかなか有給休暇を消化することができないのは、人がいないから周囲に迷惑をかけるという理由で遠慮しているなど、それなりの理由があるはずです。連休に合わせて有給休暇の取得を促進するより、はるかに効果的な気がしますが、こんなこと言うとブラックと言われますかねぇ。

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