会社と従業員の間で労務トラブルが起こる原因として多いのが、言った言わないの話しです。
例えば入社して3か月間は試用期間だとか、土曜日は交代制で出社当番があるなど労使の関係が良好な時は、なあなあでも許されたことが、一旦関係がこじれることによってトラブルとなって表に出てきます。
このようなトラブルを避けるためには、口頭で伝えるだけではなく、記録として残るように書面として残すことが重要となります。
入社の際に気をつけること
新しく従業員を採用する際に、給料や休日などの労働条件を伝えます。労働基準法でもこの点については定められており、特にトラブルとなりやすい項目については書面にて伝えることになっています。
- いつから雇うのか、契約期間はいつまでなのか
- 就業する場所や仕事の内容
- 労働時間は何時から何時までなのか、休憩時間はどうなのか
- 休みはいつなのか
- 給料はいくらなのか、賞与や退職金はあるのか
- 退職する場合について、どんな場合に解雇となるのか
会社で働く約束をすることを「労働契約を結ぶ」という言い方をする位ですから、単にこれらの条件を伝えるだけでなく、相手が理解したという確認も含めて雇用契約書として記録を残すことが大切となります。
また、雇用契約ですから働き始める前に条件を伝えて、それに同意したなら働くという約束をするはずです。そのため雇用契約書は少なくとも働き始める日より前に結ばなければなりません。
注意する際に気をつけること
例えば、遅刻の多い従業員に対して注意をする場合、まずは口で注意をすることが多いでしょう。これを何回か繰り返しても直らない場合には、解雇することもあるかも知れません。
このような時も、口で注意したということが証拠として残されていなければ、第三者から見た場合、いきなり解雇されたと判断されても仕方がありません。
こうならないためにも、口で注意するのであれば注意した日時、場所、どのようなことを注意したのか、書面として記録しておかなければなりません。もちろん最初から、注意書や警告書といった書面を渡しながら注意をすることも有効だと思います。いずれにせよ繰り返して注意したという証拠を残すことが大切です。
退職の際に気をつけること
従業員が退職する場合も、後から辞めさせられたと言われる可能性がありますから、書面で記録を残すようにします。辞めたいと言ってきた時には、必ず退職願を書面でもらうようにするべきでしょう。
細かいことを気にして退職願か退職届かと聞かれることがあります。退職願いは撤回することができるだとか、いろいろあるようですが、ここで大切なのは「何月何日をもって退職したいのか」を、はっきりさせることが問題ですからどちらでも構いません。
さらに、退職願を受け取った場合は、社長など人事権のある人が承認をすることです。承認したことが記録として残るように日付が入った承認印を押すようにするといいでしょう。
このように労務管理において大切なことは、記録として書面に残すことです。面倒だと思うかも知れませんが、このひと手間が万が一の場合に会社を助ける証拠となるのです。