7月もそろそろ終わりとなり、社会保険の算定基礎届についても一段落区切りがつきます。社員も少なく普段、入退社のあまりない会社などは、この時期だけのお付き合いというケースもあります。
お預かりした賃金台帳などを見ると、月変更漏れや社会保険への未加入者などがあったりして、申告を基に手続きをすることが前提の社会保険の制度は、社長が理解した上できちんと手続きをするのはなかなか難しいものがあるよなぁと感じたりします。
もちろん年1回の算定基礎届のご依頼でもご依頼頂ければ、遡って賃金台帳のチェックもいたしますのでご相談ください。
厚生年金の加入漏れチェックへ
社会保険は、法律では法人の場合は強制的に加入することが義務付けられていますが、実際の実務においては、事業主が年金事務所まで出向いて社会保険の加入手続きをしなければなりません。
そのため法人であっても社会保険に未加入の会社があります。厚生労働省の発表によると2013年度末時点において厚生年金に加入している会社が約170万社あるとしています。
一方で国税庁が保有する企業情報によると、所得税を社員に代わって納めている会社は全国に約250万社あります。
その差の約80万社については、給与天引きの所得税を納めているにもかかわらず、つまり社員を雇用しているにもかかわらず社会保険に未加入となっていることが疑われます。
中には社会保険の加入条件を満たさないパート社員などもあるかもしれませんが、フルタイムながら社会保険に加入していないケースもあるでしょう。
厚生労働省では、この国税庁のデータをもとに来年度から、社会保険に未加入の会社に対して加入を求めていくようです。
具体的には、加入逃れが疑われる会社に対して文書や電話で加入を求め、応じなければ訪問指導などを実施、最終的には立ち入り検査で事業の実態や社員数を把握し、強制的に加入手続きを取っていきます。
社会保険に未加入の会社は加入の検討も
これまで会社で社会保険に加入していない場合に困るのが、社会保険に加入することによって社員の手取り額が減ることです。
例えば、月給30万円で社会保険に加入していない場合は、支給額から引かれるのは所得税などの税金だけです。
社会保険に加入する場合には、健康保険料と厚生年金保険料としてさらに、約4万円も引かれるようになってしまいます。(本当は、会社が社会保険未加入でも国民健康保険料や国民年金保険料の支払いがあるけど)
社会保険は加入しなければならないからと言っても、急に「来月から4万円も引くから」では社員から納得を得るのも難しいでしょう。そうかと言って会社負担も増えるので、その分の給料を増やすのも難しい。
既存社員の場合は仕方ありませんが、これから新しく雇う予定があるというのであれば、社員の給料については会社が社会保険に加入することを前提として決めるようにするべきでしょう。
年金事務所から指摘されて加入する場合は、突然、社会保険の負担が増えることになりますが、予め社会保険に加入することを前提としておけば、不満が出ることもなくなります。
これまでも社会保険に未加入の会社に対する加入要請はありましたが、実際には3分の1の会社が加入していませんでした。
年金制度を維持するために消費税を上げたのですから、年金制度維持のため企業間の不公平感をなくすことも必要なのは確かです。
さて、今回はどの程度本腰を入れて加入促進を進めるのでしょうか。
参考記事:2014/7/4付日本経済新聞
「厚生年金、加入逃れ阻止 政府、納税情報で特定 中小など80万社指導へ」