前回、これまで日本の会社は長時間働く社員を評価するということを書きました。
この考えのもととなるのは、終身雇用と年功序列というものが背景にあります。つまり、若い社員は安い給料でも会社のために頑張れば、将来出世して給料もあがり定年まで働けるから今は我慢してね。というものです。
ところが、いまはそんなことを言っていられる会社も少なくなり、定年まで安心して働けるというのも分からない時代になっています。
でも、若い社員の意識は保守的になりつつあるようです。
定年まで働きたいと思うか
日本生産性本部では新入社員に対して「働くことの意識」調査を行っています。この中で「定年まで働きたいか」という質問があるのですが、平成25年度には30.8%となっており過去と比較しても、今の方が高い割合となっています。景気の減速や草食系が増えているということと関係あるのでしょうか。
ちなみにグラフをみると就職氷河期と呼ばれていた平成12年前後が、いちばん低くなっています。就職氷河期で希望する会社に入れなかったので、定年まで働きたいとは考えなかった割合が高いようです。
話は変わりますが、こちらでは毎年の新入社員の特徴とタイプというのを流行をなぞって発表しています。平成26年度のタイプは「自動ブレーキ型」でした。
その理由としては、こんな感じです。
知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要。
話をもどして、さらに「デートの約束があった時、残業を命じられたらどうしますか」という質問があるのですが、デートをやめて残業をするという、プライベートより仕事を優先する意向が右肩あがりに高くなっています。
ワーク・ライフ・バランスが進まない理由
別の調査ですが、日本生協連による調査の中で「ワーク・ライフ・バランスが進まない原因と思われるもの」というのがあるのですが、これをみると、1位「職場復帰や再就職が難しい」37.7%、2位「長時間労働しないと評価が下がる」が33.2%、3位「周囲が早く帰らない職場が多いから」29%となっています。
中でも「長時間労働をしないと会社からの評価が下がるから」について年代別のものをみると、20代がいちばん高く特に男性では47.1%と約半数となっています。
就職活動の大変さや景気動向も踏まえた傾向があるのかも知れませんが、若い社員ほどワークライフバランスよりも、長時間働かなければと考えていることがわかります。年功序列や終身雇用など、企業の安定性は過去の話となっているのにもかかわらず、若い社員の考え方は長時間労働を厭わないものとなっているようです。
長時間労働は精神疾患等の疾患につながるリスクがあるとされています。このような背景もあり、社員を意図的に追い込むブラック企業の問題もあるわけですから、国として残業代ゼロの話の前に、まずは上限を定めるルールを作ることが必要だということです。