朝日新聞によると、政府の産業競争力会議は、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討するようです。
「残業代ゼロ」一般社員も 産業競争力会議が提言へ
これは第一次安倍内閣の時に出てきたホワイトカラーエグゼンプションというものです。当時は結局「残業ゼロ法案」「過労死促進」との批判を受け導入されませんでした。
残業代を払わなくてもいい社員とは
労働基準法では、管理監督者や一定の専門職においては残業代を支払わなくてもよいとされています。朝日新聞に図がありましたのでこちらを参考にすると役員、部長などの上級の管理職、「裁量労働」で働く専門職に当たります。
今回は、これらの社員に加えて年収が1千万円以上などの高収入の社員、収入が高くなくても会社と労働組合が合意した対象社員についても残業代ゼロとするとのこと。どちらの場合も社員本人が同意することが前提です。
残業ゼロ社員はまずは大企業から
対象要件を見てみると、導入される仕組みとしては労働組合がある会社の対象社員のケースが影響が大きくなるでしょう。
労働組合については年々組織率が下がっており、平成25年においては、17.7%となっています。企業規模別でみると1,000人以上が63.6%となっており、残業ゼロが対象となるのは労働組合がある大企業が中心となるようです。本人の同意とありますが、他の社員が同意している場合は、断りにくいでしょうから微妙なところです。
成果を求めると言いながら長時間労働も求める
確かにデスクワーク中心の仕事であれば、必ずしも労働時間の長さと成果が繋がらないケースがあります。
ですが、労働基準法では1日8時間を超える労働を禁止しており、残業代というのは法律で定めた時間を超えて働かせることに対する罰金でもあるわけです。
本来であれば、罰則があるからこそ残業をさせることを抑制する効果を見込まれているのでしょうが、現実ではサービス残業があったり、「残業をさせても残業代を払えばいいんでしょ」です。
「残業代がゼロ」なら無駄な残業をしないで早く帰るから大丈夫、という声も聞こえてきそうですが、成果を上げて早く帰る社員よりも、長時間残業している(会社にいる)社員の方を高く評価している部分もある気がします。
要は、日本は村社会なので村のルールを守る社員を評価し、その村のルールとはこれまで休日や残業を厭わず仕事をする社員を評価するというものでした。
残業代をゼロにする前に働く意識を変える必要が
残業代ゼロを導入するためには、まずはこの村のルールを変えなければなりません。つまり長時間働く社員を評価するという考え方を改めることです。
また、残業代をゼロにするのであれば、仕事の効率を上げそもそも残業を想定せずに仕事を終わらせる工夫が必要です。働き方に対する意識も変えていかなければなりません。
そして国としても、長時間労働によって高まる過労死等のリスクを防止する法律の他にも、例えば長時間労働の上限に対する罰則を定めたり、勤務時間と勤務時間に一定のインターバルを導入するなど労働者を守る仕組みが必要となるでしょう。