ふだん会社をクライアントとして仕事をしているので、ブログの内容も会社側の目線で書いています。でも今回は、一部の企業の行為が真面目に取り組む会社に迷惑をかけていることもあるので、働く側の目線で書きたいと思います。
実際の労働条件と違うハローワークの求人票
退職や転職などで次の仕事を探す場合、インターネットの求人サイトや人材紹介会社などいくつかの方法がありますが、失業保険の手続きに行くこともあり、まずはハローワークで仕事を探してみる機会が多いと思います。
そんなハローワークの求人票の記載内容について、実際の労働条件と異なるという申し出が7,783件寄せられていたそうです。
内訳を多い順にみてみると賃金に関すること26%、就業時間に関すること18%、選考方法・応募書類に関すること13%、職種・仕事内容に関すること11%、雇用形態に関すること9%、休日に関すること8%、社会保険・労働保険に関すること8%となっていました。
東京労働局に寄せられた苦情には、基本給30万円と記されていたが、実際の給料30万円には60時間の残業代が含まれていた、勤務先は都心部の店舗としていたが、実際には都心から遠く離れた郊外での勤務を提示された、経理事務を募集しているので面接を受けたら営業しか採用はないと言われた、などのケースがあるようです。
厚生労働省では3月24日から「ハローワーク求人ホットライン」を開設して、労働基準監督署や日本年金機構、都道府県の消費生活センターなどと連携を図り、該当企業に対して事実確認と必要な指導を行っていくとしています。
求人票を見る時に注意すること
実際に求人票と違う場合には相談窓口に相談するとして、まずは求人票を見る際に注意する点を上げてみましょう。「ブラック企業対策プロジェクト」のサイトでは「企業の募集要項、見ていますか?-こんな記載には要注意!-」という冊子を配布しています。この中からいくつかご紹介します。
給与の中に残業代の支払いを含んだものとなっているか
通常残業をした場合には、残業時間に対する残業代を支払わなければなりません。しかし中には一定の残業時間に対する残業代を定額で支払うとしている場合があります。
このやり方自体違法でありませんが、既定の残業時間を超えて働く場合には追加で残業代を支払わなければなりません。そのため定額残業代の場合には、それが何時間分なのか、その時間を超えた場合にはきちんと残業代が支払われるのかを確認しなければなりません。
残業代以前の問題として、そもそも長時間労働をさせる意図があるのではないか、と疑ってみる姿勢も必要です。
店長(管理職)は残業代が出ない
入社後、短期間で店長や管理職となる場合は注意が必要です。
なぜ短期間で責任の重い立場となるのか、その理由を確認しなければなりません。成長企業なのか、人の出入りが激しいためなのか、あるいは残業代を支払いたくないためなのか、とこのような理由が考えられます。
年俸制は残業代が出ない
給料が年俸制となっていて、年俸以外の支払いは無いという場合も注意が必要です。
年俸制であっても、それは給与の額を年単位で決める制度であって、月を単位に給与を決めるやり方と変わりません。月給30万円であっても年俸360万円であっても、残業がある場合には、ざっくりと言うと月に支払われる30万円に対して計算した残業代が必要となります。
さきの冊子には、他にもいくつか注意する点がまとめられています。
ブラック企業を減らすために
社員の雇用を守るために必死に取り組んでいる会社がある一方で、労働者の善意を悪用して潰れるまで使おうと考えるブラック企業があります。
特にベンチャー企業では多少給料が安く労働時間が長い場合もあるでしょう。働く人の捉え方で本人は満足していても、他人から見るとブラックと感じる場合もあるかもしれません。
それでも経営者が労働者を使い捨ての道具として考えているかどうか、そこで働く社員には伝わるものがあると思います。今ではSNSなどの情報発信ツールも増えていますから、悪いうわさは広がりやすくなっています。
今回の「ハローワーク求人ホットライン」の受付時間が平日8:30~17:15(土日・祝日・年末年始除く)といかにもお役所仕事で誰が相談できるか、というツッコミはさて置き、このような窓口の利用や情報発信の声をあげることによって、少しでもブラック企業と呼ばれる会社が減り、真面目に経営している会社が割を食うことがなくなることを期待したいと思います。
なお弊事務所では、労働者からのご相談は受付けておりませんので、相談はハローワーク、労働者側の社労士や弁護士までお問い合わせください。