解雇

国家戦略特区に見る解雇ルール作りの難しさ

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政府が、成長戦略の柱として位置づける「国家戦略特区」で導入する規制緩和について検討してきた「解雇ルール化」などを見送る方針を固めたようです。

これは、労働者と経営者との間で解雇の条件を事前に契約書面で決めるというものでした。

そもそも外国企業や新興企業が進出しやすくすることを目的として、導入を検討してきましたが、野党などから「解雇特区」などとして政府に対する攻撃材料となっておりました。

特区の導入目的は、優秀な人材を集めやすくすることによって、企業の成長ステージに合わせた人材を雇用し、経済の活性化を促すものでした。

起業したばかりの中小企業の多くは、優秀な人材を集めることに苦労し、会社の成長も遠回りになりがちです。本来はそのような企業を対象として考えられたものだと思います。しかしながら一部の例外を作ることの難しさがあるようです。

解雇については、労働契約法において客観的合理性や社会通念性があるかどうかが判断材料とされており、正社員の解雇は無効と判断されるケースがほとんどです。

実際には解雇は難しいので、社員を辞めさせたいのであれば会社が社員に退職を勧める退職勧奨ということになります。

退職勧奨の際に注意すること

しかしながら退職勧奨についても、その手段や方法が社会通念上相当と認められる範囲を超えないようにしなければなりません。もちろんその程度が過ぎれば退職勧奨自体が無効、と判断されてしまいますのでさじ加減が必要です。

具体的には、次のような点に気をつけなければなりません。

  1. 何回にも渡って退職勧奨を行ったり、長時間に渡って執拗に退職勧奨しない。
  2. 仕事を与えなかったり、嫌がらせをすることによって退職することを促さない。
  3. 退職勧奨に応じないと言っているにもかかわらず、退職勧奨を繰り返さない。

このように正規雇用の社員を辞めさせることは難しいため、大企業では、正規社員の雇用に慎重となり、やむなく非正規雇用を増やすということにつながっています。

そうは言いながら一方で、特に中小企業では解雇が多く行われており、またその多くが労働者の泣き寝入り状態となっています。一部が、解雇を不服としてあっせん、労働審判などを起こしますが、最終的にはお金で解決ということになっています。

今回の特区については、雇用ルールに透明性が益すようにも感じていましたが、大企業や中小企業それぞれの事情もあるなかで、共通したルールを作ることの難しさがでたようです。

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